旅・たび・にっき

旅や乗り物関連のお出掛け話のブログです

盛岡と鳴子温泉の旅・2日目

日付が変わり、そろそろ寝ようかと思っていると、ようやく車掌さんが検札に来た。遅い。「妙高」の時とは、えらい違いだ。

過去の経験からベストと思われる格好(二人分のシートを使い、横になる)をして睡眠に入る。しかし、いつもながらなかなか眠れない。何度か眠りに落ち、ふと気づくと福島駅だった。ここでは20分の停車時間があるので、ホームに降りてみた。すると反対側のホームに寝台急行「八甲田」がやってきて、先に出ていった。周りを見ると、何人かの人がホームに出て、伸びをしたり、写真を撮ったりしている。席に戻り、しばらくすると20分の休養を終えた列車が再び動き始めた。

次の停車駅の仙台駅から「津軽」は仙山線に入る。再び眠りに入った。次に気づくと、列車が後ろに向かって走っている。山形駅を過ぎ、進行方向が変わったのだ。どうやら仙山線内はずっと眠っていたらしい。

それから、もう一眠りして、東根駅に着くころに起きた。もうすぐ日の出という時間だ。日が出て、完全に目が覚めたところで、昨日買っておいたおにぎりで朝食とした。

真室川駅に着くと上りホームに特急列車が停車していたので、ホームに降りてヘッドマークを見ようと先頭車両まで行った。「こまくさ」だった。そのまま見ていると「津軽」の車掌さんに

「お客さん、出ますよ」

と声をかけられ、急いで近くのドアから乗り込んだ。

それから、洗面所に行き、歯をみがき、降りる準備をした。

 

7時23分、横手駅到着。ここで北上線に乗り換えだが、40分ほど時間があるので、改札を出てみる。駅前をウロウロしていると、通学時間になったらしく、高校生がどんどんと改札を抜け、駅から出てきた。すぐ近くに学校があるらしい。ここでレンズ付きフィルムを買おうかと思ったが、そう撮るところもあるまいと思い、やめた。

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みどりの窓口で18きっぷに日付を入れてもらい、乗る列車の改札が始まったので、列の後ろについた。

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ホームに入ると、正面に停まっている白に緑のラインが入ったきれいな車両が目的の快速「きたかみ2号」だった。2年前に乗った会津高原鉄道の列車のような車内の一両編成のワンマンカーだ。北上線は、さして景色も良くなく、時折ウトウトしているうちに、終点の北上駅に着いた。

 

ここでは予定より一本早い列車に乗れたが、それには乗らずに改札を出て、駅のスタンプを押してから予定通りの列車に乗った。久しぶりの客車列車だ。

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1時間ほどで今回の目的地である盛岡駅に着いた。絵はがきでよく見る、北上川の向こうに岩木山という構図を期待したが、くもっていて山などまったく見えなかった。

少々がっかりしつつ地図を見ながら石割桜を目指す。通りの途中で<石川啄木新婚の家>という看板を見つけ、少し寄り道。特に見るところもないので、すぐに石割桜に向かう。大きな木が見えてきた。それが石割桜だった。確かに幹で石が豪快に割れている。説明の看板を読んで、岩手公園(盛岡城址)に移動。途中、堀の跡を見てから公園に行き、辺りの景色を楽しんだ。

駅方面に向かって歩き、開運橋のたもとに今回の最大の目的である「ぽぷら館」を探す。しかし、開運橋付近にそれらしき店は見当たらない。20分近く探してようやく発見したが、それは大きな木にかかった一枚の看板だった。そこには「長い間ご愛顧ありがとうございました。護岸工事のため撤去しました」といった内容の文が書かれていた。ここを目的に来たのに、ショックがデカい。何しにはるばる来たのか。

 

仕方なく、重い足取りで駅まで戻った。ぽぷら館で食べるつもりで、昼に何も食べていないので、ホームの立ち食いそば屋で天ぷらうどんを食べた。これがまずい。ただ、腹をいっぱいにしただけだ。なんとも虚しい盛岡だった。カメラなど買わなくて良かった。

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盛岡に別れを告げ、今度は鳴子を目指して北上駅方面に戻る。今にも雨が降り出しそうな、どんよりとした空模様だ。北上駅を過ぎ、乗り換えのため一ノ関駅で一度下車する。駅のスタンプを押し、パンフレットをもらって、再び列車に乗る。今日乗った東北本線の列車で、初めて客車列車じゃなかった。この辺の地域の普通列車はすべて客車列車で運行されているのかと思ったが、そうでもないらしい。

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14時49分に小牛田駅に到着。とても真昼とは思えない暗さだ。ここで鳴子行きの快速「いでゆ」に乗り換える。1時間ほど待ち、ホームに入ってきた列車はキハ28。もろにローカル線といった感じの列車で、すごい音を立てて走っていく。スピードは決して速くなく、快くもない。快速とは名ばかりといった感じだ。

 

16時43分、鳴子駅に到着。ここでは共同浴場「滝乃湯」で温泉に浸かることになっている。駅から遠いとゆっくり浸かれないなと思っていたが、すぐ近くで歩いて5分とかからなかった。一組の親子連れの後ろについて入った。ガイドブックには入浴料150円と書いてあったが、ラッキーにも無料開放デーだった。

服を脱ぎ、中に入ると、あまり広くはないが、木の湯ぶねに白濁色のお湯がたっぷりとはられっている。硫黄のにおいが強烈だ。客は先ほどの親子連れともうひとりに私の4人だった。お湯につかり、なんか変だなと思ったらメガネをかけたままだった。急いで外して棚に置き、再びお湯に浸かった。2年半ぶりの温泉はゆっくりでき、盛岡での無念を汗と共に流し去ってくれた。

駅に戻り、駅のスタンプを押して、今度は新庄行きの列車に乗る。時間的には、かなり余裕があった。体はまだポカポカで暑いくらいだ。

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列車に乗ると、トンネルが多く、景色はあまり楽しめなかった。新庄駅に着くころには外は真っ暗。時計を見ると、1、2分遅れているようだ。新庄駅では、今計画で唯一にして最大の3分というきつい乗り換えだ。過去、3分や4分での乗り換えに失敗したことなどない。しかし、それは列車が定刻に着いたからこそ。1分でも遅れたら一大事だ。もし酒田行きの列車に乗り遅れたら「ムーンライト」にも乗れなくなってしまう。そして、その心配が現実のものとなりつつあった。もう着いていなければならない18時47分になっても列車はまだ走っている。駅に近づいた気配も感じられない。焦る心とは裏腹にゆっくりと列車はホームに滑り込んだ。

時間がないので、とりあえず反対側のホームに停まっている列車に飛び乗ったが、これは山形行き。違う。急いで降り、階段を駆け上がり、陸羽西線のホームを見つけて走る。しかし、そこには列車の影すら見えない。遠ざかるテールランプも見えない。乗り遅れた。計画がめちゃくちゃだ。果たして帰れるのだろうか。いろいろな思いが頭の中を駆け巡る。しかし、悔やんでいても仕方がない。とりあえず改札を出た。

時刻表をめくったが、今日中にはもうほとんど動けない。18きっぷで明日中に帰ることができるのか、再び時刻表をめくった。すると、今日中に羽越本線の駅まで出ておけば、新潟経由で何とか帰れることがわかった。一安心して、予定より帰りが遅くなると家に電話を入れた。

羽越本線まで出るのはいいが、どこへ行くか。一晩明かすことになるのだから、なるべく大きな待合室がありそうな大きな駅を選んだほうが良い。すると、鶴岡駅酒田駅のどちらかだ。そこで、より大きそうな酒田駅を選び、酒田行きの快速「月山5号」に乗った。

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21時11分、酒田駅に到着。ここで朝まで過ごすことになる。

改札を出て、窓口にある時刻表で、帰りの列車の時刻をチェックして、メモった。

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実際のメモ。2300などの数字は、特急を使った場合の運賃と特急料金。

 

それから待合室へ。しばらく備え付けのテレビを見たり、持参の本を読んだりしていた。ふと使えなくなった「ムーンライト」の指定席券をどうしようかと思った。払い戻すにはどうしたらいいのかと思い、窓口にある時刻表で調べた。すると、指定席券の払い戻し手数料は30%と書いてある。そして、さらにカッコ付きで最低310円とも書いてある。手元の「ムーンライト」の指定席券は閑散期ということで、300円。これでは、払い戻そうとしたら10円払う羽目になってしまう(実際そんなことはないだろうが)。払い戻しはあきらめて待合室に戻った。

再びテレビを見ていると、周りの人数がだんだんと減っていき、やはり一人旅らしい若い男性とふたりだけになった。やがてテレビも消えたので、荷物を枕にベンチで寝ることにした。

しばらくすると、

「お客さん、閉めますよ」

と駅員さんに起こされ、駅から追い出されてしまった。時計の針は12時(24時)を指している。